第21章 【なみだあめ】越前リョーマ
ヤダ、恥ずかしいよぅ・・・
キミ、名前はー?なんてみんなに囲まれて、どうしたらいいか解らずに困っていると、竜崎・・・?、そう私の名前を呼ぶ声にドキンと胸を弾ませる。
「リョーマくん・・・!」
「こんなとこで何してんの?」
「あ、私、女子テニス部に入部届けをだしに行く途中で・・・」
ふーん、そう気のない返事をしたリョーマくんに、おちび、知り合い?もしかして彼女?、なんてさっき小宮山先輩に飛びついていた先輩が、今度はリョーマくんにおんぶをしながら問いかける。
「マジかよ?こんな可愛い子、越前も隅におけねーなー、おけねーよ。」
なんて他の先輩も言い出すから、あ、あの・・・、そう恥ずかしくて俯いて、それからチラッとリョーマくんに視線を向けたら目があって、かーっと顔が熱くなって慌ててまた俯いた。
「ふふ、越前くん、可愛い彼女だね?」
そう唇に軽く握った手を添えてクスクス笑う小宮山先輩に、リョーマくんは白い帽子のつばをグイッと下げて、別に、そんなんじゃない・・・、そうぶっきらぼうに呟いた。
目深にかぶった帽子の隙間から見えるリョーマくんの頬が、ほんの少しだけ赤く染まっているような気がしてドキッとした。
「きゃー!!リョーマ様!リョーマ様!リョーマ様~!!!」
「ちょっと朋ちゃん、練習の邪魔だよ!」
地区大会も目前に迫った5月。
爽やかな五月晴れと駆け抜ける風が気持ちいいテニスコートで、親友の朋ちゃんとリョーマくんの応援に来ていた。
本当にもう、朋ちゃんったら、恥ずかしいんだから・・・
そう真っ赤になりながら俯いて、それからチラッと視線をあげると、レギュラーの先輩方にドリンクを差し出して回る小宮山先輩の姿が見えた。