第21章 【なみだあめ】越前リョーマ
「あら、あなた・・・」
リョーマくんいるかな・・・?、なんてコート内を見回していたら、フェンスの中から声をかけられて、ビクッと肩を跳ねさせる。
「ごめんなさい!勝手に見学しちゃって・・・」
そう慌てて逃げ出そうとする私を、あ、待って、別に大丈夫よ、そう聞き覚えのある声が呼び止める。
あれ、この声・・・?そう思って振り返ると、その声はやっぱりさっき私に道案内してくれた小宮山先輩だった。
「あ、さっきはありがとうございました。」
「どういたしまして、でも随分時間がかかったわね。」
そうクスクス笑う小宮山先輩は、コート内の数人の先輩方と色違いの、白地にピンクのジャージを着ていて・・・
それに、どうして男子テニス部にいるんだろう・・・?
そう不思議に思ってマジマジと見てしまうと、目があった先輩は、あぁ、これ?そう優しく微笑んだ。
「私、男子テニス部のマネージャーなの。」
これはマネージャージャージ、そう柔らかく笑う先輩は、制服の時はおろしていた髪をポニーテールに結んでいて、スコア票を抱えるその姿はさっきより可愛らしく見えた。
「璃音ちゃーん、誰と話してんのー?あ、一年生だー!ねえ、キミ、璃音ちゃんと一緒にマネージャーやんない?」
突然、小宮山先輩に飛びつきながら現れた先輩に驚いて、あ、あの・・・、そう眉を下げる。
小宮山先輩は突然飛びつかれたのに驚きもせず、もう、英二先輩、彼女、ビックリしてますよ?、そう先輩の腕の中から慣れた手つきで抜け出した。
「彼女は女テニ入部希望者ですよ、ほら、ラケット持ってるじゃないですか。」
「あ、ほんとだー、ちぇー、かわいいマネージャーが増えるかと思ったのにー。」
そう後頭部で腕を組んで、ニィッと笑うその先輩の視線が恥ずかしくて俯くと、英二先輩、何してんですかー?なんて他の人達も集まって来ちゃう。