第19章 【サボテンの花言葉】不二周助
『噂になっている市川美沙さんとは、先日行われたABCオープン後の関係者様との会食の席で一度お会いしただけで、その後は仕事でもプライベートでも一切会っていまいませんし、当然、交際という事実もありません。』
そう、柔らかな口調だけどきっぱりと言い切る周助に、よしよし、ちゃんと否定したね、なんて頷いてみたりする。
『写真では彼女のマンションに入っていく不二選手が映っていますが、これはどういう事ですか?』
『そのマンションへ行ったのは事実です。でもそれは同じマンションに住んでいる友人を尋ねる為で、彼女の部屋を訪れた訳ではありません。』
それは男性ですか?なんて突っ込まれて、はい、中学からの旧友でテニス仲間の・・・手塚や越前と共通の友人です、そう周助が答える。
『一切会っていないと言いましたが、彼女が不二選手のホテルを訪れたのを目撃したものがいるそうですが?』
『そう言えば来ましたね・・・すぐにお引き取り願いましたが・・・。本当、迷惑な話です。』
あ、サラッと「黒」出した、すぐに消えたけど、笑顔でフッて「黒」出した。
『第一、僕にはちゃんとお付き合いしている彼女がいますから。』
そう突然周助が暴露したから、思わずブーッと口に含んでいたコーヒーを盛大に吐き出す。
しゅ、周助!?そう口を拭いながら信じられない思いでテレビを眺める。
あらあら、周助くん、はっきり言うわね、なんて隣の家族は微笑ましく眺めている。
『それは誰ですか!?』
『一般の方なのでちょっと・・・でもずっと僕と彼女は一緒でしたし、これからも離れることはありません。』
記者会見場が騒然となり、また一斉に光り出したフラッシュの中、シレッとした顔で周助は微笑んでいる。
『それは婚約者と言うことで間違いありませんか?』
『そうですね。』
『ご結婚はいつ・・・?』
『具体的には・・・そうだな、今度公式戦で手塚に勝てたら結婚しようかな・・・?』
はいー?周助、いったい何を言っているの?
そう唖然とする私の横で、あんた達、そんな話になってたの?なんて言う家族に、フルフルと大きく顔を振り、意味不明、そう呟いた。