第19章 【サボテンの花言葉】不二周助
「・・・どうして、キミがここに・・・?」
信じられない気持ちで彼女の顔を見つめる。
ここは事務所が用意したホテルで、どうしてこの場所を彼女が知ることが出来たのかとか、どうしてこの部屋に入ることが出来たのかとか、そんな当然の疑問が次々と頭に浮かぶ。
そんな動揺する僕の様子を彼女は楽しそうに眺めると、ちょっと親しい記者の方に突き止めてもらったんです、そう言ってクスクス笑った。
「この部屋にはどうやって・・・?」
「このホテルの従業員、私の顔を見たら快く鍵を開けてくれましたよー。」
守秘義務もなにもあったもんじゃないな・・・
だいたい、セキュリティー的にも不味いだろう、そう思ってため息をつく。
「キミのしたことは犯罪だし、許される事じゃないのはわかっているよね?すぐに出て行ってくれないか?」
そう低い声で彼女を一瞥すると、そんな怖い顔、しないでくださいよ?そう言って市川さんが僕の方に歩み寄る。
「私達、縁あってお近づきになれたんだし、せっかくだから楽しみましょうよ・・・?」
そう言って僕の首に腕を回し、胸の谷間を強調しながら上目遣いで身体を押しつけてくる彼女のその行動に、怒りを通り越して呆れ返り、クスクスと笑みがこぼれてしまう。
そんな僕の様子を、誘いにのってきたと勘違いしたのか、市川さんは僕のジャージのファスナーを下げながら首もとに唇を寄せてくる。
・・・気持ち悪いな、その手付きも肌の感触も、彼女のきつい香水の香りも、全てが不快でたまらない。
「・・・見くびらないでもらえるかな?」
そう言って僕のファスナーを下ろした彼女の手をとると、え?っと驚いた顔をする市川さんの身体をそのまま押し返した。