第19章 【サボテンの花言葉】不二周助
「いったいどういう事ですか!」
週刊誌の編集長に抗議の電話をするマネージャーの声が、チームの事務所に響き渡る。
突然わいたグラビアモデルとの熱愛報道。
スポンサー主催のパーティーで挨拶しただけなのに、偶然、英二と彼女の自宅マンションが同じだったせいで、でっち上げられたお泊まりデート。
朝から鳴りっぱなしの事務所の電話。
うるさくてイライラする。
「不二、悪いが誕生日の彼女との予定はキャンセルしてくれ。こんな時に目立つ行動は控えてもらいたい。」
そう言うマネージャーの声に言葉を詰まらせる。
「当然、これからはトレーニング施設以外は事務所が用意したホテルから外出禁止、もちろんその移動中も僕と常に行動をともにしてもらう。」
そうチームからの要請に、まるで芸能人みたいだな・・・そう思いながらため息をつくと、わかりました、そう観念して返事をする。
アスリートとはいえ、プロとなるとエンターテイメントの世界となにも変わらない。
スポンサーがあって、色々と大きな力が動くこの世界では、恋愛も自由にさせてもらえない。
璃音・・・その笑顔を思い出してふーっとまたため息を落とす。
彼女のことだから、この状況に憎まれ口を叩いても、僕の潔白は信じてくれているはずだし、誕生日のドタキャンも素直に納得してくれるだろう。
それでも良い気はしないだろうだし、残念に思うはずなんだ・・・
案の定、掛けた携帯電話から聞こえた無理に笑う璃音の声に心を痛める。
2月29日、4年に一度の本当の誕生日。
生まれた日からずっと一緒に過ごしてきたのに、突然わいた僕の熱愛報道によって、その連続記録もこれで終了。
「璃音・・・本当にゴメン。」
そっと呟いて、通話を終えた携帯電話に唇を落とした。