第19章 【サボテンの花言葉】不二周助
『だけど謝らなければならないことがあるんだ。』
そう声を潜めて申し訳なさそうに謝る周助に、うん、わかってる、そう私は明るく答える。
「誕生日の事でしょ?」
『うん・・・暫くはチームの指示に従わなくちゃならなくてね、マネージャーに止められてしまったんだ・・・』
そりゃそうだよね、マスコミや世間の目もあるし、自由に出歩いたり出来ないよね・・・
こんな時だし仕方がないよ、気にしないで・・・?そう言って笑顔の奥に寂しさをそっと隠した。
今まで29日の誕生日だけは必ず一緒にお祝いしてきた。
連続記録も5回で終了、申請していた有休も意味なかったな・・・
満員電車で目に入ったスポーツ新聞の2人の笑顔にため息をついた。
「ちょっと、不二周助と市川美沙、すごいショックー!」
「あんなバカそうな女のどこがいい訳?やっぱ胸!?」
「所詮、不二選手もただの男だったってことね。」
会社でも2人の話題は持ちきりだった。
私と周助との関係を知らない同僚達はみんな言いたい放題で、周助はそんな人じゃないよ!なんて思わず声を張り上げて、みんなの驚いた視線に慌ててウウンと咳払いをする。
「璃音、今まで興味ない振りして、不二周助のファンだったの?」
そう驚いて言うみんなに、・・・まーね、なんて苦笑いして視線を反らした。
交際報道は連日続き、嬉しそうな市川美沙ちゃんのインタビューが画面を賑わせる。
暖かく見守ってくださぁい、なんて甘ったるい彼女の声にさすがにイライラして、あー、もう見るのヤメヤメ!そう言ってテレビの電源を落とした。