第18章 【10年後の木の下で】菊丸英二
それから1時間くらい経ったところで、もう一度電話が鳴った。
来たって思って慌てて電話に出ようとしたら、家族のニヤーッと笑う視線が気になって、なんだよっ、文句あるっての?って頬を膨らませる。
べーつにー、そう言ってニヤニヤするかーちゃんとねーちゃん達に首をすくめなから、ダッシュでリビングを出て自室に向かうと、それから慌てて電話に出る。
「もしもし璃音?あのさ、ごめん、オレ____」
『あ、菊丸さんの携帯ですか?私、璃音の同僚の市川です!』
璃音だと思いこんで出た電話は璃音からではなくて、へ?って思って戸惑ったんだけど、市川って名前は聞いたことがあって、市川・・・美沙さん?そう恐る恐る問いかける。
すると彼女は、そうです、市川美沙です!あの、璃音が大変なんです!、そう電話の向こうで慌てて言った。