第18章 【10年後の木の下で】菊丸英二
結局、誕生日はリビングのソファで一日中ゴロゴロして過ごした。
ずっと璃音のことをばっか考えていたらやっぱすんげー寂しくて、だからこそ尚更璃音のせいだって意地になった。
邪魔だから自分の部屋に行きなさい、そう言うかーちゃんに、だってこんな日にひとりでいたくねーんだもん、そうボソッと呟いたら、あんたいくつよって大笑いされた。
だいたい、かーちゃんがこんな時期にオレを産んだのが悪いんだ、だから璃音に忘年会なんか入るんじゃんか!そう叫んだら、言いがかりはやめなさい!って頭を叩かれた。
夜の8時くらいに、もう一度璃音から着信があって、忘年会の途中なのに電話してくれたんだな、そう思ったらすぐに声が聞きたくなって、でもさんざん無視したくせに今更でれっかよって思って結局出なかった。
英二、いい加減にしなさいよ、一日中携帯眺めてるくせに出もしないで、璃音ちゃんが可哀想!そうかーちゃんとねーちゃん達がまくしたてる。
「いつまでも意地張ってると、本当に愛想尽かされるんだからね!」
そう言うねーちゃんに、だーかーらー、愛想尽かしたのはオレのほう!って大声で言い返したけど、なんか急に不安になってちょっと胸騒ぎがした。
ソファで横になったまま璃音とのLINEを眺めて読み返すと、数ヶ月分さかのぼってみても、ずっと仕事でゴメンね?がメインのメッセージに、そうだよ、オレ、ずっと我慢してたんじゃん!って思った。
そりゃお互いに近くに住んでいるし、たまには空いた時間に落ち合って、身体を重ねたりはするけれど、それはもちろんすごく重要なことだけど、でもオレがほんとにしたいのはそんなことなんかじゃなくて・・・
たまにはめいいっぱい元気に跳ね回ってデートしたいし、ゆっくり一日中ゴロゴロして過ごしてたっていいから、隣に璃音がいてくれて、そんで笑っていてほしかったんだ。
ほんと、結局は璃音がオレより仕事優先させてんのが気に入らないだけじゃん?
オレってばやっぱどーしよーもないガキなんだ・・・
『ゴメンナサイ、もう私のこと、キライになった・・・?』
最後に無視したLINEのメッセージが胸をズキンと締め付けた。