第18章 【10年後の木の下で】菊丸英二
そうやって授業では子供達に抜き打ちテストをしてみたり、部活では手塚並にグラウンドを走らせたりして、まさに生徒に八つ当たりするとんでもない横暴教師になりながら数日間を過ごした。
あ、名誉のために言っておくけど、ちゃんと愛情もって、生徒達の将来のためを思った指導の範囲でだかんね?
オレ、コレでも生徒達からはすんげー人気のセンセーなの。
天気がいいと歴史の授業を体育にしちゃったりして、社会科の教務主任にしょっちゅう大目玉もらったりするけどさ。
そんなこんなで昼は過ごして、夜はテストの採点をしたり、部活のオーダー練ったりしながら過ごした。
その間、何度かあった璃音から連絡には、そう簡単に許してなんかやんないもんね!なんて意地になって、みごとに全部スルーした。
28日になるとすぐに着信があったけど、それも無視したらまたすぐにLINEが入った。
お誕生日おめでとうって、璃音せいで全然めでたくねーっての、そう思ったらますますイライラして、結局、その日は朝まであまりよく眠れなかった。
朝になると抜けるような青空で、なんでこんな絶好のデート日和なんだよって、オレの気持ちも知らないでって天気にまで腹が立った。
ひとりでいても気が滅入るから、誰か遊んでくんねーかな?そう思ってLINEのグルチャで呼びかけたら、見事にみんなに断られた。
みんな、つめてーの、そう思いながらリビングのソファでふて寝してたら、誕生日なのに璃音ちゃんとデートしないの?ってねーちゃんがニヤニヤしながら話しかけてくる。
ねーちゃんにはカンケーないじゃん!ってふてくされたら、あ、とうとう振られたわね?そう面白がってオレの顔を覗き込んでくるから、そんなねーちゃんにも腹が立って、ソレもコレも全部璃音のせいだって思った。
ちがーう!振ったのはオレのほう!そう言って大声をあげると、なに、本当に別れたの?ってすんげーびっくりした顔をしたから、このままだとそーなるかもね!ってまたふてくされた。
クッションを抱える腕に力を込めると、もうほっといてよ!そう言って寝返りを打って背もたれに顔を隠した。