第17章 【Valentine kiss】丸井ブン太
「そっか、お前、俺のこと好きだったんだな。」
「は?うぬぼれんじゃないわよ!誰があんたなんか!」
「ビンゴだろ?そのチョコだって本当は俺のだろ?違うのかよ?」
「ちがっ!こ、これは!!」
これはブン太のために作ったんじゃない!
なんどもなんども失敗して、アンタなんかのために頑張ったわけじゃない!
絶対違う!そう大声で叫ぶと、昨夜苦労して包んだラッピングの紙をビリビリと乱暴に破り捨てる。
「お、おい、何すんだよ・・・?」
「これは、私が食べるために作ったのよ!」
「ば、やめろって!!」
ブン太が慌てて私からチョコの箱を取り上げたけれど、肝心の中身は既に私の口の中。
「出せ!今すぐ口から出せ!俺が食う!」
「ごくん・・・残念でした~!全部飲み込んじゃったわ!」
空の箱を手にがくりと肩を落としているブン太にアッカンベーをして、それから、ざまーみろ、そう付け足してニヤリと笑う。
「・・・食ってやる。」
「は?」
「意地でもお前のチョコ食ってやる!」
「え・・・?」
そう肩を振るわせながら顔をあげたブン太の目は真剣で、その目で見つめられたものだから思わず後退りしてしまうと、そんな私の手首をブン太はしっかりつかまえて、それからぐいっと引き寄せる。
そして次の瞬間
ブン太に、キスされた____
それは唇が重なるだけの軽いのものではなく、いわゆるディープというやつで・・・
ブン太はまるで、私の口内に残るチョコの余韻を楽しむように、必要以上に熱くねっとりとした舌を絡めてくるものだから、息をするのもままならない。
「ちょ・・・、ふざ・・・」
ふざけんな、そう言って殴ってやりたいのに、ブン太はそれを許してくれなくて、手首を掴んでいたその手はしっかりと腰に回されていて、ますます思うように身体が動かない。
そんなブン太とのキスに、段々、思考回路すら低下してきて、もう考えられるのは、
甘い____
ただそれだけ・・・