第13章 【立海列伝~王者を支えるマネージャー~】切原赤也
◆私と立海と夕焼けと◆
「あいつ、また仁王に騙されたみたいだ。」
「ひひ、やっぱおもしれーやつ」
「ふふ、これから楽しくなりそうだね。」
「全く、たるんどる!」
私達はグラウンドを望む階段の上から彼が走るのを見ていた。
試合でクタクタになった後なのに、必死に彼はグラウンドを走っていた。
「全く、本当、仁王ったら酷いんだから・・・切原くん、可哀想。」
「酷いのはお前さんのほうぜよ?あいつ、すっかりその気になっとるようじゃ。」
「え!?なんでそうなるのよ?」
「お前がその気にさせたんだろぃ?」
「えー?私はただ頑張ってって言っただけだよ?」
「小悪魔じゃ、ここに小悪魔がおるぜよ。」
夕焼けの中で必死に走る切原くんをもう一度見下ろす。
「そうね・・・可愛いし、もっとイイ男になったら考えてもいいかな。」
風になびく髪を耳にかけ、そうつぶやくと、みんながびっくりして私をみる。
「な、何よ?」
「小宮山、ああいうのが好みなのか?」
「え?そういう訳じゃないけど、可愛くてイイ男は好き、かな。」
私がそう言うと、みんなが私に詰め寄ってきたから、文句ある?と頬を膨らませる。
「なぁなぁ、俺は?」
「ブンちゃん?・・・まぁ、可愛いわね・・・」
「だろぃ?」
「俺も結構イイ男だと思うがのう?」
「仁王は見た目は悪くないけど、性格がねぇ・・・」
「・・・プリッ」
「小宮山・・・俺なんかは・・・」
「ジャッカルはイイ男ね!・・・可愛くはないけど」
「ファイヤー!!」
「貴様ら、中学生の分際で・・・たるんどる!」
「うるさいわね、ゲンゲンの分際で」
「・・・ゲンゲン・・・だと?」
「弦一郎、そんなんだから小宮山に嫌われるんだ、もっと素直になれ。・・・そういう俺もイイ男の方でポイントを稼ぎたいものだな・・・」
「・・・え!?」
「れ、蓮二まで何を言うか、このたわけが!」
「だからうるさいよ、ゲンゲンは!」
「・・・」
そんな私の肩に妙なオーラを発する手が乗せられ、思わず身体が硬直する。
「なに言ってるんだい?みんな、可愛くてイイ男って言ったら、俺のことだよね?」
「な、なんでそうなるのよ?」
「・・・俺のことだよね?」
笑顔の幸村の前にはもう誰も何も言えず、私たちは無言になるしかなかった・・・