第10章 【Can you marry me?】 手塚国光
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次の日、さっそく会社に休暇届をだした。
最近、寂しさを仕事で埋めようと全然休暇をとっていなかったから、すんなり認められてほっとした。
それから連絡しておいた旧友たちに集まってもらい、青学の校旗に応援の寄せ書きをしてもらう。
国光に寄せ書きをもっていってあげたいってお願いしたら、みんな忙しいのに快く集まってくれた。
でも決勝に残るかわかんないじゃん?って菊丸くんが言ったけど、大丈夫だよ、国光、私との約束は絶対まもるもの、って言ったら、みんなにごちそうさまって笑われた。
何年たっても、もうなかなか会えなくても、本当にみんな良い仲間たち。
それからは前もってできる仕事をまとめてやったり、イギリスのガイドブック眺めたり、荷物をそろえたり・・・なんだかんだと色々忙しく過ごした。
そんな時、彼から無事に決勝進出を決めたとメールが来て、やっぱりちゃんと約束守ってくれたと嬉しかった。
そしてもうすぐ彼に会える、そう思うとすごく待ち遠しくて落ち着かなくて、目まぐるしい忙しさなのに毎日が凄く長い気がした。
やっと当日になって飛行機に飛び乗る。
あとは半日乗っているだけ、時差ボケしないように寝なくちゃなんて思ったけれど、逸る気持ちに邪魔されてあまり寝れなかった。
イギリスについて税関を抜ける。
海外旅行に慣れてきたこともあるし、彼にふさわしい人になりたいと、昔から外国語はしっかり勉強していたこともあって、苦労せずに抜けることが出来た。
ゲートの先では懐かしい顔が出迎えてくれた。
「越前くん!」
「チーッス・・・」
どうしてここに?って聞いたら、国光に頼まれて、だそうだ。
1人で大丈夫なのにって言ったら、手塚部長に怒られるからって。
「ふふ、まだ手塚部長って呼んでいるんだ?」
「部長は部長っすから。」
越前くんは2回戦で国光とあたって、ウィンブルドン初の日本人対決なんて日本でも相当盛り上がっていた。
結果はまぁ、国光が勝利したのだけれど・・・
そういえば惜しかったね?って言ったら、それ、本音じゃないっしょ、の彼の返事に、苦笑いするしかなかった。