第10章 【Can you marry me?】 手塚国光
指輪に花束、夢のようなシチュエーション
大好きなあの人からの素敵な素敵なプロポーズ
女の子なら誰でも一度は憧れる
一生に一度の甘い夢____
【Can you marry me?】~手塚国光~
チケット届いたよ?
そうメールを送るとすぐに携帯電話がなった。
「もしもし、国光?」
「・・・あぁ、届いたなら良かった。」
電話の相手はドイツにいる私の彼。
プロテニスプレーヤーとして世界中を飛び回っている。
「どうしたの?チケット送ってくるなんて初めてじゃない。」
「この試合はどうしても直接みてもらいたくてな。」
何度か彼の試合を見に行ったことはあった。
でも彼女の特権を利用するのは嫌で、自分で並んでチケットを購入した。
だから立ち見だったり、座れたとしても後ろの端の席だったりした。
航空券とウィンブルドンの決勝のチケット、センターコートの最前列・・・
これってとんでもないプレミアチケットだよね・・・?
これを手に入れるために無理したんじゃないのかな?
そんな不安はあるけれど、それでもやっぱり彼の試合を間近でみれるのはうれしい。
だいたい会えるのは半年ぶりだし。
「必ず決勝に勝ち進んでみせる・・・来れるか?」
「うん、今から休暇願い出せば大丈夫だよ。」
「そうか、良かった。」
必ず行くね、そう言って私は電話を切った。
久々に聞いた彼の声。
本当はもっと声を聞いていたい。
電話を切った後はいつも切なさが込み上げる。
もっと彼の声を聴いていたい、本当は顔をみて話したい、自分のわがままな思いをいつものように理性で押し込める。
ドイツと日本
会えない時間と距離に比例して、会いたい気持ちはどんどん大きく膨れ上がる。
それでも幼いころからの夢に向かって、一生懸命頑張っている彼の邪魔はしたくなくて、いつも自分の気持ちに嘘をつき、大丈夫だよ?って平気なふりをする。
いつの間にこんなに嘘つきになったのかな・・・
大人になるってこういうことなのかな・・・
そう自問自答しつつ私は旧友たちにメールを打った。