第31章 【菊丸の憂鬱】菊丸英二
「・・・菊丸くん、大石くんが大好きだから、大石くんが選んだものなら、絶対、気に入ってくれると思う!」
・・・へ?、その璃音ちゃんの言葉の続きに、目を見開いて振り向いた。
なんで、オレ?、そう話の流れが見えなくて、ふたりの顔を交互に眺める。
「・・・ごめんね、今日は付き合ってもらっちゃって・・・どうしても菊丸くんの誕生日プレゼントに、何を買ったらいいか決められなくて・・・」
オレの・・・誕生日プレゼント・・・?
「それは構わないけど、英二は小宮山さんからの贈り物なら、なんでも大喜びすると思うよ?」
それって・・・つまり・・・
「・・・だったら嬉しいけど、でもやっぱり、折角だから菊丸くんが一番喜ぶものをあげたいもの・・・」
ふたりで、オレの誕プレ買いに来てたってこと・・・?
「でもいいな、大石くん、菊丸くんとシンクロできるんだもん・・・」
私も早く以心伝心出来るようになりたいよ、そんな璃音ちゃんの言葉に、さっきとは違う涙が滲む。
悔しいなぁ、私だってこんなに菊丸くんのこと大好きなのに、そうほんのり染まる頬を膨らませる璃音ちゃん・・・
まさか、璃音ちゃんからの初めての「好き」を、こんな形で聞けるなんて・・・
「ほら、だからそれをちゃんと英二に伝えないとダメじゃないか。英二が聞いたら、きっと泣いて喜ぶぞ?」
「だって、恥ずかしいんだもん・・・でも、頑張る・・・誕生日には・・・あとちゃんと名前で呼ぶ・・・」
大石・・・璃音ちゃん・・・
「はは、きっと英二にとって、それが最高のプレゼントになると思うよ?」
「そうかな・・・?、喜んでくれるといいな・・・菊丸くんの喜ぶ顔、見たい・・・」
でも、その前にちゃんとしたプレゼント!、やっぱりコアラのぬいぐるみも探してみてもいい?、そう言いながら、ふたりはお店から出ていく。
そんなふたりの背中を、複雑な思いで眺め見送る。
ふたりはオレを喜ばそうとしてくれてたのに、そんなふたりをオレは疑ぐってかかって・・・