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【テニプリ】作品集/乙女気分

第31章 【菊丸の憂鬱】菊丸英二




なんだよ、みんなして面白がって・・・
まぁ、そうだよな、オレだって、当事者でもなけりゃこんな状況、我先に身を乗り出すに決まってる・・・


チラリと視線を向けた棚の向こう。
相変わらず笑顔で笑い合うふたり・・・


「大石くん、みて、こんなのもある!」
「本当だ・・・はは、似合うかな?」
「うーん・・・大石くんにはどうかなぁ・・・?」


大石も璃音ちゃんも、本当に楽しそうだな・・・
あんなふたりの顔、オレ、見たことないや・・・


さっきまではイライラして、悲しくて、どうしたらいいかわかんなかった気持ちも、間近で幸せそうなふたりを見ていたら、どんどんと落ち着いてくるのがわかって・・・


だって、やっぱ、オレ、大石も璃音ちゃんも大好きなんだもん・・・
オレが身を引くことで、ふたりが幸せになるなら、そうするしかないじゃん・・・?


「・・・それにしても、小宮山さん、本当に俺でいいのかな?」


改まった声で問いかける大石の声・・・
店内のざわめきとか、みんなの囁き声だとか、たくさんの音がしてるはずなのに、オレの耳には大石のその言葉しか聞こえなくて・・・
チラリとオレを気にするみんなの視線をはっきり感じたけど、もうそんなの、どうでも良くて・・・


ああ、不二の言う、完全に言い逃れのできない証拠を掴む瞬間がいよいよ来たんだな・・・、なんて思いながら、痛む心臓をギュッとおさえる。


いいよん、璃音ちゃん・・・
オレだって、女だったら、絶対、大石のこと好きになんもん・・・
もう、どんな答えが帰ってきたって、全部受け止められる覚悟はできてるよん?


「・・・うん、大石くんじゃなきゃ、ダメなんだよ?、だって、大石くんが大好きなんだもん!」


グサリと胸に刺さる璃音ちゃんの返事・・・
いくら覚悟は出来てたって、何もこんなはっきり言わなくてもいいじゃんか・・・


「大石で」じゃなく、「大石が」でもなく、「大石じゃなきゃダメ」なくらい、「大石のことが大好き」なんてさ・・・

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