第31章 【菊丸の憂鬱】菊丸英二
『バレてしまっては仕方がない、俺達は今、大石と小宮山さんを尾行中だ。』
「んなこと分かってるっての!、今、いったいどこいんだよっ!?」
『二丁目のコンビニの所だが・・・』
二丁目のコンビニ!!、そう思って通りに飛び出したところで、あ、そう乾と顔を見合わせる。
なんだよ、こんな近くにいたんじゃん、そう思いながらも再会を感動している気分じゃなくて・・・
「璃音ちゃんと大石は!?どこ!?どこだよ!!??」
「まぁ、待て・・・もしもし、手塚。予定外に菊丸と合流してしまった訳だが、これからどうすればいいと思・・・切れた。」
今は手塚なんかどーでもいいからっ!、そう叫ぶオレを、しー、英二先輩、見つかっちまいますよ!、なんて言いながら桃が抑え込む。
まぁまぁ、英二、落ち着いて、そうなだめてくるタカさんに、面倒くさそうなおチビと海堂・・・
なんだよ、みんなしてオレの不幸を面白がって!!
「離せ!、離せよっ!!、桃ぉー!!」
「だから静かにしてくださいって!!」
もがきながら上げた顔の先、目に飛び込んできたのは、通りを挟んだショーウィンドウの向こうで、ニットの帽子を手に嬉しそうに笑う璃音ちゃん。
そしてその視線の先にはそれを見守る大石の姿・・・
その瞬間、カーッと頭に血が上って、桃の手を振り払おうとするんだけど、今度はタカさんにまで抑えられて、全国屈指のパワープレーヤーふたりが相手じゃ全く歯が立たなくて・・・
「なんだよっ!タカさんまで!!大石ー!!!璃音ちゃーん!!!・・・んぐっ!」
羽交い締めにされながら見た光景・・・
璃音ちゃんが大石にニット帽を手渡して、大石が照れながらそれをかぶる・・・
んー・・・と考える仕草の後、今度はこっちと次々に持ち替えて、その度にふたりして笑いあって・・・
なんだよ、それ・・・
どっからどう見ても、幸せそうなカレカノじゃん・・・