第24章 【キミの名は】不二周助
「・・・先に行くよ。遅刻してグラウンド走らされても知らないから。」
「あー、ちょっと待ってよ!、もー、不二ってば、自分を好きになってくれた子の顔、気にならないのー?」
構っていられないや、そう呆れながら教室のドアを出る。
・・・そう、構ってなんかいられないよ。
わざわざ他校から押し掛けてくる女生徒になんて・・・
僕が会いたい人は、ただ一人なんだから・・・
「ふ、不二!、大変!」
昇降口で靴を履き替えていると、追いついてきた英二が慌てて呼び止める。
今度はなに?、そう大して興味も持たずに返事をする。
「そんな涼しい顔してる場合じゃないぞ!とにかく大変なんだって!びっくり仰天あわわわわーって感じだよ!」
「英二にかかったら、世の中すべてが大問題だからなぁ・・・」
まともに取り合わない僕に、違うんだってー!、そう言って英二は、その場で地団駄を踏みながらクルクル回ると、あー、もう、早くしないと帰っちゃう!、なんて僕の手を取り走り出す。
「・・・帰るって・・・なんのこと・・・?」
「いいから早く!今、行かないと絶対、後悔すんだかんな!」
「ちょ、英二っ・・・!」
問答無用で連れてこられた校門前、不二、頑張れ!、そうドンッと背中を押され、勢いのまま、前のめりで数歩、足を進める。
まったく、何を後悔するというん・・・だ・・・
歩みが止まって顔を上げると、そこで見たのは驚いた顔で振り返る小宮山さんの姿・・・
あ・・・、思わず目を見開いて、彼女の顔をジッと見つめた。