第21章 【なみだあめ】越前リョーマ
「初めて会ったときから、ずっと好きだったの・・・!」
テニスコートへの行き方が解らなくて困っていた私に、優しく声をかけてくれた。
コートで見学する私に、いつも笑顔で手を振ってくれた。
それから、私の大好きなリョーマくんを、大好きになってくれた・・・
もう一度、図書館での2人を思い出すと胸が痛んだ。
その痛みを笑顔に隠してまたぎこちなく笑った。
そう、始めてみたときから大好きだった・・・
電車の中で助けてくれたことも、テニスをするときの真剣な目も、生意気で負けず嫌いなところも、たまに見せてくれるさり気ない優しさも・・・
「初めてあったときから、ずっと・・・ずっと大好きだったの・・・」
もう一度繰り返す。
リョーマくん・・・、そう誰にも聞こえないように小さく呟いて、それから顔を上げてまた笑顔を作った。
そんな私にリョーマくんは、黙ったまま口角を上げて、それから後は振り向かないで歩いていった。
「あ、越前くん!こんな所でサボってたの?」
そう小宮山先輩がリョーマくんに駆け寄るのが見えた。
なんで名字?そうリョーマくんは不機嫌そうに返事をして、部活中!そう小宮山先輩が人差し指でリョーマくんの鼻先を指差した。
私に気が付いた小宮山先輩が笑顔で手を振ってくれたから、私も慌ててペコリと頭を下げた。
・・・本当に素敵な2人だなぁ・・・
ほら、行くよ!、そうリョーマくんの腕を引いて歩き出す小宮山先輩と、ウィーッス、そう面倒臭そうに返事をしながら、どこか嬉しそうに着いていくリョーマくんを眺めながら、また少し胸がシクンと痛んだ。
空を見上げると雲の隙間から青空が顔を覗かせていた。
それから、ポツリ、ポツリとほんの少しだけ降り出した雨が私の頬を濡らした。
明日はちゃんと晴れるかな・・・
そんな空を見上げながら、頬をまた一滴の雫が濡らした。
【なみだあめ】越前リョーマ
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