第21章 【なみだあめ】越前リョーマ
「えいっ!えいっ!・・・なんか違うなぁ・・・」
女テニコート脇、倉庫との間の通路で、1人素振りの練習をする手をとめると、フーッとため息を落とす。
あの日、朋ちゃんと抱き合って大泣きした後、2人で駅前のクレープを食べながら帰った。
それから家に帰って1人になると、ベッドに横になってまた少し泣いた。
あの後、リョーマくんと小宮山先輩は、オートテニス場に向かったのかな・・・?
その後、2人でどこか遊びに行ったりしたのかな・・・?
シュッ・・・シュッ・・・
素振りをしながら、考えるのはあの日の2人のことばかり・・・
空を見上げると、どんよりと重たい雲が空一面に広がっていた。
「膝伸びすぎ、肘曲げすぎ、肩開きすぎ、髪の毛長すぎ、へっぴり腰。」
急に後ろから聞こえたリョーマくんの声と、ラケットで膝をカクンと押された感覚に驚いて振り返る。
リョーマくんはお気に入りのグレープの炭酸飲料を飲みながら、ラケットで肩を叩いていて、そんな仕草にドキッと心臓が跳ねた。
「もう、髪の毛は関係ないでしょ!」
リョーマくん・・・心臓がドキドキとズキズキでもう何がなんだかわからないよ・・・
そうジュースを飲みながら立ち去るリョーマくんの背中を眺めて、騒がしい心臓をふるえる拳でギュッとおさえた。
「だいたい、全然集中してないでしょ・・・なんかあった?」
え・・・?、思いがけないリョーマくんの言葉に目を見開くと、視線だけ振り向いて私を見る彼と目があった。
私のこと、心配してくれるの・・・?
そう思うと嬉しくて、でも本当のことなんて言えなくて、何もないよ?、そう目をそらして誤魔化すと、ふーん、別にいいけど、そう言ってリョーマくんは前に視線を戻した。