第21章 【なみだあめ】越前リョーマ
「ちょっと、桜乃!どうしたの!?ずぶ濡れじゃない!」
ふと顔を上げると、朋ちゃんが驚いた顔で私を見ていて、慌てて駆け寄り自分がさしていた傘を差し出してくれる。
「朋ちゃん・・・」
ポケットから取り出したハンカチで私の髪を一生懸命拭いてくれる朋ちゃんの優しさに、放心状態だった目からは涙が溢れ出す。
2人のキスに心臓がドクンと大きく脈打って、それからずっと感じていた鈍い痛みが、張り裂けそうなそれに変わった。
もうそれ以上見ていたくなくて、急いで振り返り、そのまま逃げるように図書館から飛び出すと、ドアも閉めずに慌てて立ち去った。
「ねえ、今、何か聞こえなかった?」
「・・・ドア、開いてる。」
やだ、誰かに見られたかな・・・?そう不安そうな小宮山先輩の声と、俺は別に構わないけどね、そう普段通りの飄々としたリョーマくんの声が耳に残る。
「どうして泣いてるの!?誰かに意地悪されたの!?誰よ!待ってなさい!私が文句言ってくるから!!」
そう声を荒げて私が来た方に走りだそうとする朋ちゃんの手を、違うの、そんなんじゃないの!そう必死に捕まえた。
「ねぇ、桜乃ー・・・?どうしたの・・・?何があったの・・・?」
泣かないでー?ねぇ、泣かないでよー?、そう心配そうに声をかけ続けてくれる朋ちゃんに、本当に何でもないよ、そう首を振って泣き続けると、朋ちゃんの目からも涙がポロポロと溢れ出す。
「どうして朋ちゃんまで泣くの・・・?」
「だって桜乃が泣いてたら、私まで悲しくなっちゃうよ~!」
泣きながら私を抱きしめてくれる朋ちゃんに、朋ちゃんまで濡れちゃうよ?そう声をかけると、そんなの構わないよ!ってもっとギュッと抱きしめてくれる。
朋ちゃん、ありがとう・・・
うわーん、そう2人で抱き合いながら、声を上げて泣いた。