第1章 夏の思い出作り(赤)
温かいのは変態の手で。
慣れたはずやのに
触るというよりは
繋がれてる手に
ドキドキは増してく。
「あ、あの、」
「俺が触りたかっただけや」
「運転中…」
「ちょっとの間だけやん」
「危ないです」
「少しは空気読めや。思い出作りの一貫やんけ」
こういう時こそ
素直に"嬉しい"って
言えたら良いのにな。
この行為がどうなれば
思い出作りの一貫になるかは別としてね。
するり、と指の間に
入って来た細い指。
何回目かの恋人繋ぎ。
今日で最後なんやと思えば
サラサラな触り心地が
何だか名残惜しくて。
「(また繋げたら良いな…)」
これから夏が来る度に
少しでも私の事を
思い出してくれたらえぇなぁ…
なんて叶う訳無い願いを込め
手を握り返した。