第1章 夏の思い出作り(赤)
「…………あのクソ猿が」
スマホの画面を見てる背中を眺め
仰向けになったままで聞く変態の声は
もうあからさまに怒っていて。
操作してスマホを耳に当てたから
あまり会話を聞いちゃあかんやろうなぁ…と
音を立てずゆっくりと起き上がり
タオルケットを持って
部屋の片隅へ移動。
DVDはどうやら緊迫な場面で。
こちらも色んな意味で緊迫してる。
(誰や、クソ猿って)
「何やねん」
一段と不機嫌な声がして
タオルケットを頭から被り
テレビ画面へ目線を移す。
こんな事しても会話は
耳に入って来るんやけどもね。
「ちょうどそのタイミングやったんや、今」