第1章 夏の思い出作り(赤)
「ねぇ、喉渇いたぁ」
「じゃあ、俺なんか買って…」
「あ、私行くから。ゆっくりしてて!」
「そう?じゃあ、かき氷イチゴよろしくねぇ~」
「はーい」
財布持って、この焼け付くような暑さの中
逃げるように走ってく。
可奈の「あんたが行きなよ」という目線に耐えれなくて。
何が嬉しくて、独り身なのに
友達カップルと海に来なきゃなんないの。
しかも、2泊3日の旅行で。
海なんか日帰りでいい。
虚しいだけやんか。
「暑い…」
あの2人が海に入っていちゃいちゃしてるのを
シートを轢いたパラソルの下で
ずっと眺めてただけやから汗だく。
水浴びたーい。
カップルだらけの海に入んのも嫌やけど…
なんて、心の中で愚痴ってたら
こじんまりとした海の家が見えて来た。
あそこでいいや、と駆け寄って行く。