第1章 秋の終わりは始まりの合図。
スーツ姿からして
サラリーマンなのは分かるけど…
短過ぎる髪と顎髭は
あまりにもらしかぬ姿過ぎて。
更には無表情だから
ちょっと怖い。
「えぇん?」
「良いんです、良いんです」
引きつる笑顔で
慌ててその場を後にする。
怖くて逃げたってのもあるけど
そもそも、誰かと何かを取り合うのが
物凄く苦手だから。
自分の大好物も
誰かから頂戴と言われたら
簡単にあげてしまう。
良く言えば平和主義。
悪く言えば意思が無いだけ。
それプラス
気弱っていう性格が災いして
いつも"良い人"と思われる。
正確には、都合の良い人。
自分が我慢して
誰かが笑顔になるんだったら
それで良い。