第7章 どこまでも主役になれない。
「…………あっ」
「どうしたん?」
無い知恵を絞りに絞って
良い案が閃いて出た声に
錦戸さんが耳を近づけて来た。
安田さんも歌いながら振り向いてるけど
無視して錦戸さんを見る。
「………ト、トイレ、行って来ていいですか?」
「えぇよ。ってか、行かな!漏らしたら大変やん!」
「ですよね、」
聞こえてたのか
腰から安田さんの手が離れる。
すぐさま立ち上がり
ドアへ向かった。
部屋を出る前に振り返って
渋谷さんを見てみるけど…
画面を見つめたままで。
その後ろ姿にチクッと胸が痛くなる。
この"恋"には望みすら用意されてなかったみたい…