第7章 どこまでも主役になれない。
「ちゃん?」
「っあ……は、はい」
気付けば俯いていて。
名前を呼ばれ
顔を上げたら
不思議そうな表情をした
渋谷さんと目が合う。
どんな顔をすれば良いのか分からなくて目線を逸らした。
「どうしたん?さっきから下向いて」
「……何でも無いです」
「なら、えぇねんけど…あ、これやねん、車」
目の前にある路肩に停められた1台の車。
どうぞ、と開けられた後部座席のドア。
「失礼します、」
中へ乗り込めば
暖かい空気が流れて来て
ひゃっほー、と
助手席の丸山さんが振り向き
手を振ってくれる。
その手に自分の手を
振り返したら
ドアが閉められた。