第7章 どこまでも主役になれない。
なんで無言なんだろう…
電話だと顔が見れないから
渋谷さんがどんな表情してるのか
気になっていたら…
『ちゃーん、何言うたんですかー?すばるくんニヤついてますよー!』
『おまっ…余計な事言うなって言うてるやろ!』
『大事な事やん、電話って顔が見えませんから』
少し遠くに聞こえる
丸山さんの声に
心から感謝する。
いつも優しい笑顔の
渋谷さんしか見てないから
ニヤついてるところなんか
全然、想像出来ないけど…
「ふふっ…」
『今度はどこにツボったん?』
「や、私もニヤけて来ちゃいました」
『……なら、着いたら連絡するから』
『あ、またニヤついた』
「ふふ、」
『…じゃあ、着くちょっと前にまたかけるから』
「はい」
と、通話が終わり
画面が待ち受けに変わっても
目も口元も緩みっぱなしのまま。
トクトク、と脈打つのを
目を閉じて実感していた。
恋しちゃってるな、と。