過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第10章 眷属達の想い
部屋へ入ると部屋の中央に青年が佇んでおり
エルヴィン達を笑顔で迎え入れ、礼儀正しく挨拶をしてきた。
「お初にお目に掛かります。この度は私共の我儘を
お聞き届け下さり誠にありがとうございます。
私の事は『ジャック』とお呼び下さい。スミス様」
『ジャック』と名乗った男は金髪に、右は青、左は金色の眼をした
オッドアイの色男だった。
少し癖のある髪を真ん中で分け、白い燕尾服を着た姿は
品行方正を絵に書いたような姿で、さぞ女受けするだろう。
ジャックはエルヴィン達から目を左側に移し
「イサザ、もう良いですよ」と言った。
そこでエルヴィン達は初めてこの部屋に
自分達とジャック以外の人間がいた事に気づき、
彼が話し掛けた方向へと視線を移す。
エルヴィン達から見て部屋の右側にはソファセットが置かれており、
そこに優しげな微笑みを浮かべた青年がエルヴィン達に
頭を下げ、何かを引く動作を行った。
すると、エルヴィン達を案内した執事が床に崩れ落ち、
カラカラと音を立てて人形の姿に変わり、
『イサザ』と呼ばれた青年に回収された。
突然起こった不可思議な現象に言葉を失っていると、
人形を回収したイサザがエルヴィン達に笑顔で自己紹介をする。
「初めまして、ボクはイサザといいます。
ボクは人形師なのでこういう事が出来るんです。
気にしないでください」
色素の薄い茶髪に銀色の眼をした好青年の言葉を理解しようと
頭を働かせていると、イサザとは真反対の左側から
馬鹿にしたような声が響いた。
「ククッ、どいつもこいつも間抜け面で笑えるな。
どうせ理解なんてされねぇんだ。説明なんざ必要ねぇよ、
イサザ」
左側を振り向くと、そこにジャックと同じ顔をした男が
不遜な態度でソファに座り煙草を吸っていた。
ジャックとの違いはオッドアイが逆な事とオールバックにした金髪、
黒い燕尾服を着ている点だろうか。
・・・あとは言葉遣いや仕草がゴロツキのような所か。