過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第9章 逢いたい
「お疲れ様です、団長」
「あぁ、そこの書類は確認してサインしたから持って行ってくれ。
私の確認が必要な書類はそこの箱に」
モブリットが地下牢を訪れると、顔色一つ変えず
エルヴィンは事務的な指示を出し、また黙々と書類と対峙する。
そんなエルヴィンに苦笑いを浮かべながら、
モブリットは恐る恐る布が掛けられたトレイを差し入れた。
エルヴィンは一瞬目を見張ったが、すぐに毅然とした団長の顔に戻ると
視線で「これは?」とモブリットに問うた。
「顔色が優れないので少し休んだ方が良いかと思いまして・・・、
お茶とクッキーを持って来ました」
「気持ちは有り難いが、私に休む資格は無い。下げてくれ」
「ですが、団長は最低限の食事しか摂られていません。
このままでは倒れてしまいます」
「自分の身体の事は自分が一番理解しているつもりだ。
まだ問題無い」
取り付く島のないエルヴィンにモブリットは焦りながら言い募った。
「あのっ!せめて布を取って中身を確認してから決めて下さい!
お願いします!」
やけに熱心に勧めるモブリットを怪訝に思いながらも、
エルヴィンはそれに従い掛けられていた布を手に取った。
布を取った瞬間、漂ってきたお茶の香りにエルヴィンは息を呑む。