過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第9章 逢いたい
地下牢の入り口付近には牢番がいて、
ナナシの姿を認めると敬礼して
「お怪我の具合は大丈夫ですか?」と心配してくれた。
それにナナシは「大分良い」と返して、見張りの兵士に
ここにエルヴィンがいるのかと尋ねると、
曇った表情で首肯する。
兵士の話ではナナシが帰ってきたその日に自ら牢に入って、
全然出て来ないそうだ。
牢番としてその兵士がここにいるのはエルヴィンが
脱走するのを防ぐためではなく、牢屋に籠っているエルヴィンに
気のある女が擦り寄ってこないようにとの配慮からだと聞かされ、
相変わらずモテるんだな~とナナシは思った。
すると兵士は慌てて
「でも団長はどんな女が来ても見向きもしませんよっ!?
教官一筋です!」と力説してきたので、ナナシの顔が熱くなる。
何で末端の兵士にまでエルヴィンがナナシを口説いている事を
知っているのだろうか?
ナナシとしては隠してきたはずなのに、
これではまるで周知の事実みたいではないか!
動揺するナナシに気づかない兵士は、
ナナシに「団長にお会いになりますか?」と尋ねてきたが、
どうしようか返答に詰まる。
ここまで来たものの、どんな顔をして会えば良いのか
わからないというのが本音だった。
だが、ほんの少しだけ様子を見させて貰おうと、
ナナシは牢番に通してもらい、気配を殺しながら
地下への階段を下りた。