過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第9章 逢いたい
ペトラからの問いに無言で首を横に振ったナナシは、
本当に地下牢にいるのだなと思った。
強姦されて許す気になどなれないが、
まさかエルヴィンがここまで自省の念を抱くとは
思いも寄らなかったのだ。
急に黙り込んでしまったナナシに何か感じたのか
エルドが「ナナシさんも疲れてるみたいだし、今日は戻ろう」と
他の三人に声を掛け退室を促した。
三人は少し不満そうだったが、
ナナシの様子がおかしかった事に気付いていたため
素直にそれに従う。
エルドは退室する直前、ナナシにこっそり耳打ちした。
「ナナシさん、団長と何かあったんですね。俺で良かったら
いつでも相談に乗りますんで声を掛けて下さい」
「お体お大事に」と立ち去った四人の後ろ姿を見ながら、
ナナシはエルヴィンの事を考える。
反省するくらいなら始めからしなければ良かったのだ、
あんな真似・・・。
そう思うものの人は過ちを冒す生き物なので、
エルヴィンは反省するだけマシな部類なのかもしれない。
だが、エルヴィンは本当に心から反省して牢屋にいるのだろうか?
ナナシはまだ思うように動かない身体でベッドを降り、
部屋を出た。