過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第9章 逢いたい
ナナシが帰ってきたという知らせは調査兵団全体に行き渡り、
ナナシの部屋には見舞い客が多く訪れた。
「ナナシさぁぁ~ん、本っ当に心配しました!」
「でも無事で本当に良かっ・・・ガフッ!!」
「ちょっとオルオ!何で肝心な所で舌を噛むのよっ!?」
今はリヴァイ班がナナシの部屋を訪れていて、
ペトラとオルオが漫才のようなやり取りをしていた。
グンタとエルドは静かに微笑みながら、ナナシの無事を喜ぶ。
「団長を庇って撃たれたって聞いた時、以前話していた答えが
出たのかと思いました・・・不謹慎にも」
エルドが苦笑しながら言っているのは、
以前恋愛がよくわからないと相談したからだろう。
確かに彼の言う通り答えは出てしまった。
だが、ナナシがそれを素直に受け入れるわけにはいかない事情も
出来てしまい、目を伏せる。
ナナシの様子にエルドが口を開きかけた時、
「何の話だ?エルド」とグンタに聞かれたため、
エルドは「内緒」と口許に人差し指を当てた。
「何だ何だ~?隠し事か~?おまえ団長に殺されるぞ、エルド」
「団長も知っているから問題はない」
オルオが絡んできたがエルドは涼しい顔でそれを流していると、
グンタが「団長といえば・・・」と話し始めた。
「折角ナナシさんが帰ってきたのに、どうして団長は
地下牢で仕事をしているんだろうな?いつもだったら
毎日見舞いに来たりしそうなものなのに、
ずっと牢屋に入りっぱなしだろう?
おかしいと思わないか?」
「あぁ、それは私も気になってた。・・・ナナシさんは
何かご存知ですか?」