過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第9章 逢いたい
ナナシが目を覚ますと、そこは見知った部屋で
傍らには心配そうにしているナナバがいた。
「ナナシ、大丈夫?喉とか渇いてない?お腹空いてない?」
「・・・・・・・・・」
ナナシが静かに首を横に振ると、ナナバは眉をハの字にさせて
「そっか・・・」と落胆したようだった。
・・・前みたいに甘えてくれないんだね、ナナシ。
以前なら「お腹空いた」と言って一緒に物をよく食べたし、
料理に関する話に花を咲かせたものだが、
ナナシは随分と無口になってしまった。
伏し目がちで誰とも目を合わせようとはせず、
何かに怯えているようだ。
「エルヴィンならこの階にいないから大丈夫だよ。
暫くナナシの前に姿を現さないから安心して怪我を治してね」
「・・・・え・・・・?」
『エルヴィン』という名に反応したのか、
ナナシがやっとナナバと目を合わせた。
ナナバは微苦笑を浮かべると事情を説明する。
「エルヴィンから何があったのか聞いたんだ。
その・・・無理矢理したって。それで今彼は自ら牢屋に入って
反省しながら仕事をしているよ。食事も持って行ってるから
食堂にも現れないし、鍵も掛けているから廊下で
出くわすことも無い。ちょっとずつで良いから
身体が良くなるようにリハビリしていこう?」
「・・・・・・・・・・・・」
ナナシは複雑な表情をしながら、ナナバの言葉に頷いた。