過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第2章 赤い世界に射し込む蒼色
―――ソロモン!ソロモン!!ソロモン!!!
大きな声で名前を呼んでいるのに、
その人物はナナシから遠ざかっていき全然追いつけない。
お願いだから一人にしないで!
もう一人は嫌だ!
泣きながら訴えても、ソロモンは振り向いてもくれず、
どんどん先に行ってしまう。
次第に走っているナナシの息も切れ始め、
遂には足が縺れて地面に転んでしまった。
胸が苦しくて起き上がれず、ナナシは遠ざかる足音を聞きながら
静かに涙を流す。
・・・どうして、一人で行ってしまうの?
ナナシがそう言葉を零すと、ピタリと足音が止み、
踵を返してナナシの方へ向かってきた。
そしてナナシの傍で立ち止まると、
その人物は優しい手付きでナナシの頭を撫でて言った。
「だって、おまえさんにはエルヴィンがいるじゃありませんか」
驚いて伏せていた顔を上げると、
そこにいたのは穏やかに微笑むソロモンではなく・・・・
――――優しい眼差しを向けてくるエルヴィン・スミスが
ナナシへ手を伸ばしていた。