過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第2章 赤い世界に射し込む蒼色
―――赤い。
どこもかしこも赤い。
赤は嫌い。
血の色だから・・・。
今でもよく覚えている。
『迅鬼狼』の皆が死に、自分は血の海にただ一人取り残された。
ソロモンの呼び声により、私は彼の下へ召喚されたが
既に遅く、彼は首を跳ねられ遺体をバラバラにされた後だった。
何故もっと早く自分を呼んでくれなかったのだろう・・・
早く呼んでくれれば私はすぐに貴方の下に行き、
その身を守ったというのに・・・
何を躊躇してしまったの?
思慮深い貴方の考えが未だにわからない。
早く貴方の心臓を取り戻さなければ・・・。
そうすればすべての謎が解けるはず。
貴方が何を考え、死んでいったのか・・・
私には知る権利があるはずだ。
ナナシは真っ赤な世界を一人彷徨いながら、
愛しい恋人を探し求めていた。
地面も空も赤い世界で彼の人を追い求めるが、
そこには誰一人として存在していなかった。
泣きそうになりながらトボトボと足を進めるが、
先の見えない道は不安を煽るだけで展望のようなものも
存在しない気がした。
赤い世界から連れ出してくれた貴方の蒼が恋しい・・・
ソロモンの蒼い瞳を思い出し、恐怖で震える足を叱咤する。
ふと顔を上げると前方に人影が見え、ナナシは全速力で走った。