過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第8章 何故、そんな事を?
ナナシを合意無しに抱いた事に対しては怒りしか湧かないが、
一ヶ月前の喪失感を思うと四人はあまりエルヴィンを
責められないでいた。
庇われたエルヴィンが一番己の無力を嘆いたに違いない。
今回暴挙に出たエルヴィンだが、彼がなりふり構わず
手に入れたい存在はナナシ以外いないのだという証明でもあった。
「ハンジ、医療器具を用意してくれ。ナナシの傷口が
開いてしまって応急処置しか出来ていない」
「・・・ここに用意してある。傷口が開いているならあたしが・・・」
「いや、ダメだ。君達は絶対ナナシの身体を見るな。
後ろを向いたまま私に指示をくれ」
「どうしてさっ!?」
「・・・恨まれたり嫌われたりするのは私一人で十分だ。
君達は以前と同じように接してやってくれ。
そうすればナナシもきっと以前のように・・・
仲間として接してくれるはずだ」
ハンジがまた怒りを爆発させようとしたが、
切なげに答えたエルヴィンの表情を見て思い留まる。
全部一人で背負い込もうとするエルヴィンに四人は口を噤んだ。