過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第8章 何故、そんな事を?
ナナシから漂う血の匂いからして、怪我はまだ酷いはずだ。
それなのにエルヴィンはナナシを抱いたのか?
いつものナナシならエルヴィンくらい軽々と投げ飛ばしているはずなのに、
大人しくエルヴィンに抱かれている様子から
抵抗なんて出来る状態ではなかったのかもしれない。
たまたまナナシの服の隙間から見えた鬱血痕と思われる跡が
何よりの証拠だった。
―――エルヴィンは、ろくに抵抗出来ないナナシを強姦したのだ。
ギリッと奥歯を噛み締め、怒りの形相をしているミケの様子を見て
リヴァイ達は何が起きたか察し、顔を歪める。
ハンジは飛び込むように部屋に入り、
ナナシの様子を食い入るように観察した。
首元まで包帯が巻かれているナナシに心を痛めながら、
医療を齧る者として脈を測る。
随分弱々しいが、ちゃんと生きている事に安堵しつつ、
青白い顔をしたナナシを見つめていると
首筋に鬱血痕らしきものがあり、エルヴィンを振り返った。