過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第5章 もう逃さない
ナナシの身体の中央には大きな十字傷があり、
その中心に蒼い石が嵌めこまれていた。
それだけではなく、その蒼い石からクモの巣状に
血管のようなものが広がっていて、
それが脈動しているのが目視出来る。
本来心臓がある場所には銃弾を受けた時のものと思われる穴が空いており、
心臓が機能していないことは一目瞭然だった。
―――ナナシは人間ではない。
前々からそのことに関して薄々感付いていたが、
いざそれを目の当たりにすると言葉が出て来ない。
静かな室内にナナシの啜り泣く声だけが響いている。
暴かれたくない秘密を暴かれ傷ついてしまったナナシを
安心させるように、エルヴィンは努めて優しい声色を出した。
「ナナシ、すまなかった。裸にしてしまって・・・。
でも大丈夫。君がどんな身体をしていても俺は気にしないから」
愛しているよ、と囁き、エルヴィンは泣きじゃくるナナシの額に
キスを落とす。
それらは全てエルヴィンの本心だ。
戦うために犠牲にした身体は不器用な一途さが愛おしいと思うし、
それに・・・・。
チラリとナナシの全身に視線を巡らせる。