過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第5章 もう逃さない
ガラガラと走る馬車の中で、
向かいから強い眼光を向けられたまま重苦しい空気に耐える。
このまま調査兵団本部まで連れて行かれるのだろうか、と
外へ視線を投げると、彼が沈黙を破った。
「君が・・・・無事で本当に良かった。怪我は?
具合が悪そうだが、傷は癒えたのだろうか?」
「・・・・・・・・・」
恐らくここで口を開いてしまったら、
余計な事まで口走ってしまうだろう。
会いたかったけど、会いたくなかった。
グッと押し黙り俯いていると、頬に手を添えられ
強制的に顔を上げさせられ、見慣れた蒼眼が間近に迫った。
「またダンマリか?一ヶ月振りに会えたんだ。
声だけでも聞かせて欲しい」
頬に添えられた手から親指が動き、ナナシの唇に沿わされる。
暫く唇の上を這っていたかと思うと、
突然親指が口内に侵入してきてエルヴィンの指を舐める形になった。
驚いて抵抗するものの身体に力が入らない上、
エルヴィンが覆い被さるようにしてキスをしてきたため、
ナナシは為すがまま大人しくするしかなかった。
何度も角度を変えてされる濃厚なキスに苦しくなり、
エルヴィンの胸を叩くが、その行為が止められることはなく
より一層深くなっていく。