過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第35章 最期の夜明け
「待ってくれ、話が見えない。君はこれから死んでしまうんだろう?
それなのに、もう一度会えるというのはどういう意味なんだ?」
「言うか、言わないか迷ったのだが・・・私の『死』は
人間の『死』とは少し異なるのだ。この身体は死ぬ。
だが、魂は死なず、実家に強制送還される仕組みになっている」
「・・・この身体は死ぬけれど、君は死なないと?」
「そうだ。本体である私は死なず、新たな身体を得れば
戻ってこれなくもないのだが・・・今度はいつ戻れるかわからない。
数年・・・下手したら数十年も掛かってしまうかもしれない」
「いつ死ぬかわからない俺に『心臓』を預けても良いのか?
大事な物なんだろう?」
ナナシは真っ直ぐエルヴィンを見据えて言った。
「大事なものだから、お主に預けるのだ。お主はそう簡単に
くたばりそうにないしな。・・・それに『心臓』が此方にあった方が、
戻りやすいというのもある。今度会う時は『臨時教官』ではなく
『ただのナナシ』に戻って調査兵団との縁も切れているが、
『心臓』がエルヴィンの傍にあれば、もしかしたらお主が
生きている内にまた会えるかもしれぬ。・・・・だからっ!」
「わかった。俺は君が戻ってくるのをいつまでも待っているよ、ナナシ」
エルヴィンの言葉にナナシは首を横に振る。
「待たなくても良い。お主には幸せになって貰いたいから、
どこかの女と所帯を持って・・・」
「それ以上言うと怒るぞ、ナナシ」
怒気を含んだ声に顔を上げれば、本当に怒った表情をした
エルヴィンがいた。