過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第32章 『心臓』
「悲願を達成した君は本当に死ぬまで私の傍にいてくれるのか?」
「・・・・え・・・?」
キョトンとした表情でエルヴィンを見るナナシに、
何故か苛立ちが募った。
「『心臓』を取り戻した君は、私との約束を反故にして
出て行ってしまうんじゃないかと言っているんだ」
「・・・おいっ!」
「エルヴィン!」
それは言い過ぎだとリヴァイとミケが声を上げたが、
既に遅くナナシは傷ついた表情でエルヴィンを凝視していた。
「・・・わ、私は・・・そんなに信用が無いのか?」
しまったっ!と思ったエルヴィンだったが、
無意識なのかナナシがぎゅっと『心臓』を抱き抱えたのを見て、
彼を傷つける言葉が流れ出る。
「君は私の気持ちを知りながら、応えようとしてくれない。
その理由も明確に言ってくれない。死ぬまで一緒にいてくれる事に
同意したにも関わらずだ。正直、君の考えている事がわからなくて
混乱している。果たして君は約束通りにしてくれるのか、と」
「・・・・・・・・・・・・」
ナナシは沈黙を守るように、きゅっと口を引き結ぶ。
口を引き結ぶのは、隠し事を絶対言わないようにする時に出るナナシの癖だ。
数ヶ月一緒にいると、その辺の癖も段々わかってきていた。