過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第32章 『心臓』
エルヴィン達がそうやって『心臓』を凝視していると、
白くて小さい手がそれに伸ばされた。
「気がついたか?ナナシ。体調は?」
「・・・ん。もう・・・大丈夫だ」
手を伸ばしたのはナナシで、エルヴィンが気遣わしげに
声を掛けると横たえていた身体をそっと起こして座席に身を預けた。
大丈夫だとは言うが、ナナシの顔色は真っ青のままで、
エルヴィン達は彼の身体を心配する。
先程の戦闘で技を使ったから、その消耗が激しいのかもしれない。
『心臓』の為とは言え、只でさえ残り僅かな命を削るような真似を
して欲しくなかったというのがエルヴィンの本音だった。
「・・・『心臓』・・・持っててくれたのだな。ありがとう」
ナナシはエルヴィンから『心臓』を受け取ると、
心底ホッとした表情をしてみせた。
その表情にエルヴィンの心がまたチリッと痛む。
だから、つい辛辣な言葉が出てしまった。