過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第32章 『心臓』
まだ何か隠し事があるのだろうかとエルヴィンが訝しんだ時、
ナナシは閉じていた口を開いた。
「確かに私はお主の気持ちに応えられないし、
その理由も言えない。だが、約束を反故にするような真似は
絶対しない。それだけは本当だ・・・信じてほしい」
「・・・・すまない、君を傷つけるような事を言って。
本当は君が約束を破るような子じゃないとわかっているんだ。
だが、元恋人の『心臓』を手に入れた君は・・・未練を無くして、
あっという間に私の前から姿を消してしまうんじゃないかと
心配になって少し焦りを感じてしまった。本当にすまない」
やっと冷静になったエルヴィンはすぐに弁解したが、
ナナシの表情が晴れることは無かった。
調査兵団本部に着くまでの間、馬車内には微妙な空気が漂い、
それに巻き込まれたリヴァイとミケは心の中で
「エルヴィンの馬鹿野郎」と只管罵声を浴びせていたのだった。