過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第32章 『心臓』
「その『心臓』は動いてるのか?」
走る馬車の中、エルヴィンが持ったままの『心臓』を見て、
静かにミケが問うた。
リヴァイも興味深げに視線を『心臓』に落とす。
「あぁ、そのようだな。血は流れていないが確かにこれは動いてるよ。
血を押し出すポンプのように・・・」
二人に見えるように『心臓』を翳し、三人は食い入るように見つめた。
「・・・・グロいな」
「・・・・所々欠けてるしな」
リヴァイとミケの感想にエルヴィンも同感だったが、
不思議と嫌悪感は無い。
むしろ、この『心臓』を持っていると安心するのだ。
「不思議だ・・・・」
嫉妬すべき相手の『心臓』がここまで心を落ち着かせてくれるとは
夢にも思わなかった。
これが『不死の心臓』『王者の心臓』などと呼ばれる所以が
少しだけ理解できる。
脈動する『心臓』は見る者に圧倒的な存在感を与え、
持っていると自分にもその生命力が分け与えられるような
錯覚を起こさせるのだ。