過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第31章 夢の残骸
狂気に満ちたその瞳は、ソロモン団長への嫉妬や
ナナシへの妄執で濁りきっている。
そんな人物が人類の為に強化した兵士を使うとは到底思えない。
それに・・・
チラリとナナシを見て思う。
特別な力は人を惑わせる。
凡人は特別な力を持つ者を敬い、嫉妬し、
自分の物にしたいと願い・・・
凡人が特別な力を持てば、他者を見下し、
自分が神にでもなった気になって、人間性を失う・・・。
・・・・あぁ、そういう事なんだね、ナナシ。
やっとわかったよ。
君が改造手術をしたがらないのも、普通の人間を装っているのも、
周りの人間が狂気に囚われないようにする為なんだね。
迅鬼狼のように化物扱いされ迫害される人間を、
これ以上作りたくないからなんだね。
人間の敵は人間で・・・、例え特別な力を手に入れても
自身の心が弱ければ、押しつぶされて狂ってしまうだけなんだね。
「―――ナナシ、私の浅慮を許して欲しい」
「・・・え?」
突然かけられた言葉にナナシはキョトンとする。
エルヴィンは何を謝ったのだろうか?と一瞬思考が停止したが、
彼が何かを決意した表情をしていたので声を掛けず、
黙って見守る。