過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第29章 運命の招待状
「ダメだ!今の話を聞いた以上、君を一人でそんな危険な場所に
行かせる訳にはいかない。兵士を同行させるか、
行かないかどちらかを選べ」
2ヶ月前、ナナシを一人行かせたことで歯車が狂った事を思い出し、
エルヴィンは一歩も退かない姿勢でナナシに対峙する。
もしも一人で行かせて何かを吹きこまれ、
また距離を置かれたらどうする?
もしももう二度と帰ってこなかったらどうする?
エルヴィンの真摯な眼差しを受けたナナシは、
努めて厳しい態度で応じた。
「行かねば調査兵団に累が及ぶ可能性が高いと言っているだろう?
行かないという選択肢はない」
「では兵士の同行を・・・」
「わからぬか?足手纏いだと言っておるのだ。
調査兵団は対巨人戦闘の玄人だが、人間相手ではどうだ?
私から一本も取れない輩に同行されても迷惑なだけだ。
相手は仮にも『元・迅鬼狼』・・・お主は『迅鬼狼』を舐めすぎている」
その言葉でエルヴィンは、地下街にいた『元・迅鬼狼』メンバーの
クレイグを思い出し、ぐっと息を詰める。
老齢の身でありながら、リヴァイに押し勝った手並みは凄まじかった。