過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第29章 運命の招待状
「『迅鬼狼』壊滅後・・・生き残った僅かな仲間の中でも
意見が分かれてな・・・。地下街で暮らす事になったクレイグ達は
保守派のようなものだ。荒事を起こさず『心臓』の手掛かりを
探す手伝いをしてくれていた連中だ。そしてラダトの街で
死んでいたエッカルトは強硬派だった。
私を頭に据え自分達を貶めた王政に反旗を翻そうと考えていた連中だ。
手紙を寄越してきたカールはどちらかと言うと強硬派だったと思う。
今思えば当時カールは頻りに私に迅鬼狼を抜けるように
言ってきておった。そして、私に新たな組織を作ろうと・・・」
そこで一旦言葉を切ったナナシは、険しい表情でエルヴィンを見据えた。
ソロモンを裏切った後何食わぬ顔でナナシ達の前に現れ、
ナナシに新たな組織を作るよう進言してきた青年の顔を思い出し、
苦々しく思いながら言葉を発する。
「カールは王政に忠誠を誓っている兵団が嫌いだ。
だから私兵を作って待ち構えている恐れがある。故に、
お主達を連れて行くことは出来ん」
新たな組織を作る事を拒絶した自分にカールは人が変わったように怒り狂った。
それ以来会わないように、見つからないようにしていたのに
見つかってしまうとは、嫌な予感しかしない。
恐らく、エルヴィン達とは会わせない方が良いだろう。
着いて行くと言いそうなエルヴィンに先手を打つと、
彼は眉を吊り上げて反論した。