過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第28章 ナナシの余命
「これから言う事は酷な話だとわかっている。・・・だが、
我々調査兵団にはまだ君の力が必要なんだ。君が死ぬその時まで
共にいて貰えないだろうか?」
「――――――・・・・っ!!」
エルヴィンは跪いて空いていたナナシの右手を取り、
チュッと唇を落とす。
それはまるでプロポーズされているかのようで、
ナナシの顔に熱が集中した。
これまで何度も自称プロポーズをされてきたが、
今回程ナナシの胸にきたものはない。
役に立たないかもしれない余命一ヶ月の男をそこまで欲して貰えるなら、
ナナシは喜んでその手を取る。
例え、それがエルヴィンの個人的な感情ではなく兵団の為の
プロポーズだったとしても、ナナシは嬉しかった。
だから、ジャックに握られていた左手をそっと外し、
エルヴィンの手に両手を添えてナナシは誓った。
「この身体が使い物にならなくなるまで此処にいてやるから、
お主は安心して団長をしていろ。坊・・・・」
「ナナシ・・・・ありがとう」
海に行く約束は果たせないだろうけど、
エルヴィンの役に立つなら悪くない終わり方だ。
ナナシは心からの笑顔でエルヴィンに答えたのだった。