過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第28章 ナナシの余命
「ジャック!早く帰ってその愚行を止めてこい!!
これは命令だ!ヒモロギに拷問紛いの事を行う事を禁ずる!
あやつは自室謹慎で絶対外に出すな!処分は当面それだけだ」
「わかりました。自室謹慎で一歩も外に出さず餓死させる
・・・でよろしいですね?」
「わざとか?わざと遠回しに私を批判しておるな?
そんなに処分が不服かっ!?」
「不服です。貴方を傷つけ、貴方の薬を焼いた罪は重い。
薬がなければ貴方は・・・・」
ナナシはそれ以上言わせまいとジャックの口を手で塞いだが、
ハンジが間に入ってきて「薬って、どういう事!?さっきから
何の話をしてるのっ!?」と、その手を退けてジャックに詰め寄った。
エルヴィン達としてもナナシが前から飲んでいた薬が
どういうものか気になっていたので、ジャックの言葉に耳を傾ける。
「先程、スミス様に申し上げた通りナナシ様の御身体は
あと一ヶ月と保ちません。それもただ保たないのではなく、
命が果てる時に近づけば近づく程激痛に苛まれてしまうのです。
ヒモロギが燃やした薬はその痛みを緩和させるものでした。
その痛みを思えばヒモロギの一人や二人殺しても
余りあるくらいだと我々は考えています」
「・・・・・・いや、だから、それは・・・・」
シーン・・・とその場が静まり返り、ナナシは居た堪れなくなった。
隠していた事を暴露され、どうして良いかわからない。
折角心からエルヴィン達の力になりたいと思うようになったのに、
このままでは自分は役立たずとして調査兵団を追い出されてしまう・・・。
だが、ジャックの言った事も本当で、
余命一ヶ月では痛みとだるさでもう何の役にも立てないかもしれない。
このまま無様に死にゆく姿をエルヴィン達に見られるくらいなら、
いっそもう此処を離れた方が・・・
「―――ナナシ・・・」
そう思いかけた時、ふとエルヴィンに呼ばれ顔を上げると、
いつの間にか傍らに来ていた彼が真剣な表情でナナシに言った。