過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第28章 ナナシの余命
「ナナシ様、御手に怪我をされてしまったのですね。
貴方の美しい手に傷が残ってしまったらと思うと
私は胸が張り裂けてしまいそうです」
そっと包帯が巻かれた手を取り、懇願するように跪く姿は
どこかで見たことがあるような・・・とリヴァイ達は既視感を覚え、
ハッとする。
リヴァイ、ミケ、ハンジ、ナナバの目がエルヴィンに集中した。
・・・このジャックという男は性格も、気障な台詞を平然と吐く所も
エルヴィンと似ているのだ。
外見も同じ金髪なのでエルヴィンと似てなくもないのに、
ナナシはどうしてエルヴィンを選んだのだろうかという疑問が湧いたが、
そこは本人にしかわからない事なので頭の隅に追いやる。
「貴方を傷つけたヒモロギには然るべき報いを致しましょう。
まずは左腕を切り落としましょうか」
笑顔でさらりと物騒な事を言うジャックに、
ナナシは顔を引き攣らせながら首を横に振った。
「ダメだ。ヒモロギは・・・暫くの間謹慎処分で・・・・」
「ふふふふ、ご冗談を・・・ナナシ様。どのような理由が
あろうとも主に牙を剥いた愚か者にはそれ相応の処罰を
下さねばなりません。それに・・・・」
ジャックのオッドアイが一瞬ギラリと光った。
「多分もう遅いと思います。今頃実家に帰ったヒモロギは、
待ち構えていたツクモとイサザと・・・連れ帰ったジェリーによって
生皮くらい剥がされていますよ」
ひぃぃぃぃっ!!とナナシは声にならない悲鳴を上げて、
ジャックの頭を殴りつけて言い放った。